焼却炉って、今はあまり見かけませんが、昔小学校によくありましたよね。
焼却炉は、ごみを焼却するときに、そこで発生するダイオキシンが人体に害を及ぼすということで問題になりました。ダイオキシンとその調査について説明していきたいと思います。
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ダイオキシンとは?その発生源は?
ダイオキシンは、正式にはダイオキシン類と言います。これは単一の物質ではなく、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、コプラナーポリ塩化ビフェニル(co-PCB)(または「ダイオキシン様ポリ塩化ビフェニル(DL-PCB)」ともいう。)という物質の総称で、塩素の数やその付く位置が異なる異性体が数多く存在し、それらは毒性が異なります。
なんと!PCDDは75種類、PCDFは135種類、コプラナーPCBは十数種類の仲間があるそうです。でも、これらのうち毒性があるとみなされているのは29種類なんだって。
ダイオキシン類の発生源は?
ダイオキシン類は、廃棄物の焼却、塩素によるパルプなどの漂白、あるいは塩素系農薬などの化学物質合成時の副産物として非意図的に生成されます。つまり、ダイオキシン類はゴミ等の焼却により大気へ、製紙工場や化学工場の排水により水域へ、農薬散布等により土壌や水域へ放出されることになります。
しかし、現在ではダイオキシン類対策特別措置法や自治体による環境保全条例によって、ダイオキシン類の排出は厳しく規制されています。また、今ではパルプの漂白は塩素をほとんど使用しない方法を採用しているため、ダイオキシン類の発生は抑えられています。今日におけるダイオキシン類の排出源は、焼却や燃焼による割合が高くなっています。
例えば、過去は、ダイオキシン類はペンタクロロフェノール(PCP)やクロルニトロフェン(CNP)という過去に使用された農薬(除草剤)に不純物として含まれていました。PCP とCNPは、それぞれ 1990年と1996年に農薬としての登録が失効したので、現在では製造・使用が禁止されています。また、かつて絶縁油や熱媒体として利用されていた PCB もダイオキシン類を含む物質の一つですが、この物質も「化学物質の審査及び規制に関する法律(化審法)」によって製造、使用が禁止されているため、新たな発生源とはなりません。
しかし、ダイオキシン類は自然環境中ではほとんど分解を受けない難分解性物質ですので、水環境や土壌に長期間残留します。これが、焼却炉があった土地などで、ダイオキシン調査が行われる理由です。
日本は国土が狭いので、「ごみ焼却大国」になったんですが。日本メーカーのごみ焼却技術はスゴい!というのを少しだけご紹介します。
埼玉県の事例です。焼却などの廃棄物中間処理施設が集中していました。しかし、前述の法律、条例等の規制効果により、平成 20 年度の排出量は減少(-97%)しました↓
埼玉県のダイオキシン類は、ほぼ 100%大気へ排出させています。その内訳は、小型焼却炉等(28%)、民間廃棄物焼却施設(35%)、市町村等ごみ焼却施設(8%)で計 71%で、焼却起源が多いことがわかります(図2)。次に多いのが産業系発生源で、22%を占めています。これは製鋼用電気炉やアルミニウム合金製造を起源にするものです。また、火葬場、野外焼却、自動車排出ガス、タバコの煙からも 7%のダイオキシン類が排出されています。
ちなみに、全国では、平成 9 年度の排出量は 7,680~8,135g-TEQ/年と推計されていましたが、平成 20 年度には、221g-TEQ/年まで減少しています(-97%)。日本の技術力、すごいですね。
さて、ここからはいよいよ、ダイオキシンの基準や調査方法について説明していきたいと思います。
環境基準値
ダイオキシンの環境基準は、ダイオキシン類対策特別措置法の規定に基づいて、人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準として設定されています。
- ダイオキシンの土壌の環境基準値は、
1000pg-TEQ/g以下 (調査指標 250pg-TEQ/g)
土壌以外にも、環境基準は定められていますので、そちらもご紹介します。
各環境媒体における環境基準値
(平成11年12月27日環境庁告示第68号/改正平成14環告46・平成21環告11)
ダイオキシン類の耐容一日摂取量(TDI)
中央環境審議会並びに生活環境審議会及び食品衛生調査会において、合同で科学的見地からの検討が行われ、平成11年6月21日にその報告書がとりまとめられ、同25日のダイオキシン対策関係閣僚会議で了承されました。
その結論の要点は、
- ダイオキシン類の当面の耐容一日摂取量(TDI)を、これまでのダイオキシン類(PCDD 及びPCDF)のほかにコプラナーPCB を含め、4 pg-TEQ/kg体重/日とする
(1日体重1kg当たり4 pgTEQ )。
なお、動物試験では、TDI の算定根拠とした試験結果の水準以下でも微細な影響が認められていることから、今後とも調査研究を推進していくことが重要
※pg (ピコグラム)=「1兆分の1グラム」というものです。なお、この耐容一日摂取量(TDI)は、生涯にわたって摂取し続けた場合の健康影響を指標とした値であり、一時的にこの値を多少超過しても健康を損なうものではありません。
また、ダイオキシン類の耐容一日摂取量(TDI)は、最も感受性の高いと考えられる胎児期におけるばく露による影響を踏まえて設定されています。発がんなどの影響についてはより高いばく露でないと観察されません。4pg-TEQ のTDI は、動物実験で得られた結果を人に当てはめる際に、不確実性を見込んでさらに10分の1の数値に設定されています。
(参考資料)環境省水・大気環境局総務課ダイオキシン対策室
焼却炉のダイオキシン類調査
義務調査
基本的にはダイオキシン類の調査は、自主的に行われるケースがほとんどです。都道府県によっては、条例が定められていて、以下の場合には、義務調査になるケースもあります。
大規模な焼却炉など、特定施設(法第2条第2項に定める、ダイオキシン類を発生し及び大気中に排出し、又はこれを含む汚水若しくは廃液を排出する施設。以下同じ。)がある場合
都道府県によっては条例で、「廃止したとき」「土地の形質変更を行うとき等」調査が義務づけられている場合があります。
3000㎡の土地の形質変更等で土壌汚染対策法の4条もしくは3条調査をした際に、現在や過去に焼却炉があった場合。
こちらも、都道府県によっては条例があり調査が必要になるケースがあります。有害物質使用の特定施設を廃止する場合(土壌汚染対策法3条)や、3000㎡以上の土地の改変を行う場合(法4条)は、土壌汚染調査が必要になりますが、この時、その土地に焼却炉があったことが判った場合です。
この場合は、以下のような流れで調査していきます。条例やガイドラインで、環境省のマニュアルとは別に地点の決め方などが決められている都道府県もあります。
《参考》工場・事業場におけるダイオキシン類に係る土壌汚染対策の手引き 環境省・大気環境局土壌環境課
一般的な自主調査の場合
「売買しようとする土地に、昔焼却炉があった」ので、ダイオキシンを調査したいという場合など、ダイオキシン類の調査の多くは、自主調査です。
その場合は、基本的に焼却炉があった場所を中心に地表面5cmの土壌を5地点採取し、その試料を混合して分析します。
実際の焼却炉跡地の売買の調査事例も掲載しておりますので、ご覧下さい。
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