銭湯って、土壌汚染が関係があるんですか?
銭湯からとのお問い合わせは、よく頂きます。気をつけるポイントは、重油と薪を使っておられる場合は、建築廃材などを使用されていないかどうかという点ですね。
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日本の銭湯の現状と燃料
公衆浴場は横ばい・燃料は都市ガスに移行
日本人の憩いの場である銭湯が年々減少しています。2017年3月末時点で3900軒と、統計開始以来、初めて 4000 軒を割り込みました。1963 年に 59.1%だった家風呂普及率が、2008 年には 95.1%に達しました。2013 年にはほぼ全世帯にゆきわたったとし「浴室の有無」は政府の住宅統計の調査項目から除外されました。体を洗うことに関しては家で事足りる状態になり、今は、公衆浴場として残っている銭湯ですが、ただここにきて燃料価格や固定経費も上昇しており、廃業がさらに加速することも懸念されています。
日本独自の文化を形成してきた銭湯。 衛生水準の向上に大きく貢献しましたが、各家庭に風呂が普及したことや銭湯設備の老朽化、燃料高騰、後継者不足など経営環境は厳しさを増しています。
銭湯の燃料の内訳
東京都環境局 東京都地球温暖化防止活動推進センターの資料によると、東京都の銭湯燃料は都市ガスが 24 事業所(69%)と最も多く、雑燃料(廃油、廃材など)使用も 12 事業所ありました。A 重油、軽油から都市ガスに切り替える例が多くなっています。
雑燃料(薪・廃材利用)を使用した際の健康への影響は?
薪などは、不完全燃焼時に有害な物質を発生させる恐れがあります。具体的に、どんな物質が発生するのでしょうか。その例として、木質バイオマスストーブから出る排ガスの成分と健康被害について環境省がまとめているものをみてみたいと思います。
特に、化学処理のされていない無垢の木材が使われていない場合。建設廃材には防腐剤や接着剤や塗料などが含まれる場合があり、また農薬が付着した樹木もあります。その他の廃棄物も燃焼時に有害成分が発生するおそれがあります。
燃焼と排ガス発生の概念を下図に示すと…
VOC(Volatile organic compounds)
揮発性有機化合物の総称。光化学オキシダントおよび浮遊粒子状物質(SPM)の二次生成粒子の原因物質とされているほか、発がん性など人体に有害な影響を及ぼすものもある。
PAH(Polycyclic aromatic hydrocarbons)
多環芳香族炭化水素の総称。皮膚や呼吸器系、膀胱、肝臓、腎臓に刺激を与える物質が多く、発がん性、変異原性、催奇形性を持つものもある。
PM(Particulate matter)
粒子状物質。呼吸器疾患、循環器疾患および肺がんの疾患に関して、総体的に一定の影響を与えるとされる。
CO
一酸化炭素。血液の酸素運搬能力を下げ、一酸化炭素中毒を引き起こす。
SOx、NOx、HCl
燃料中の硫黄分で発生する SOx や窒素分で発生する NOx、塩素分で発生する HCl などは、いずれも呼吸器系などに刺激を与える。また、機器の腐食を起こす。
ダイオキシン類
塩素を含む物質の不完全燃焼で発生し、重金属が触媒となって生成量が増加するダイオキシン類は 、細胞のがん化を促進する作用(プロモーション作用)があるとされているが、中にはそれ自体に発がん性があるものもある。
重金属
重金属を含む燃料の燃焼では、排ガス中に重金属が含まれ、これを摂取すると健康に悪影響を及ぼすことがある。
このように、不完全燃焼時の排ガスやすす、チャー(炭化物)、タール等には VOC、PAH、PM、CO 等の有害な成分が多く含まれます。このため良好な燃焼状態を保つことが重要です。また、木質バイオマスの由来によっては有害物質等(硫黄、窒素、塩素、ヒ素、カドミウム、クロム、銅、鉛、水銀、ニッケル、亜鉛、鉄、アルミニウム、塩化ナトリウム、窒素、フッ素等)を含む可能性があります。
この中で、土壌汚染に関わるのは、重金属類(ヒ素、カドミウム、クロム、鉛、水銀、フッ素等)とダイオキシン類になります。
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銭湯の土壌汚染調査
始まりに書かせて頂いたように、銭湯の燃料は、都市ガスに変更されてきてはいるものの、今でも薪や廃材などの雑燃料や、A重油や軽油などの液体燃料が使用されています。
銭湯の燃料に、重油を使用している場合
重油を使用している場合には、油汚染の有無について調査を行ないます。油臭油膜の調査を行い、油汚染の範囲を特定することとなります。
ボイラー付近の土壌や重油の保管を行っていた場所の土を採取し、油の臭いや、油の膜が水に浮くかなどを検査するケースがほとんどです。
なかにはこぼしてしまったり…、購入したのだが掘った時に油の臭いがして、といったケースでは、より深い深さの土壌を採取して油臭や油膜を調べるケースもあります。
現在、油汚染には明確な基準は定められていませんが、油汚染対策ガイドラインにて、
「鉱油類を含む土壌(以下「油含有土壌」という。)に起因して、その土壌が存在する土地(その土地にある井戸の水や、池・水路等の水を含む。以下同じ。)において、その土地又はその周辺の土地を使用している又は使用しようとする者に油臭や油膜による生活環境保全上の支障を生じさせていること」=「油汚染問題である」とされています。
分かりにくい書き方ですが、つまりは、その土地その周辺の土地を使用している人、使用しようとする人が油臭や油膜で困る状態=油汚染問題 ということです。
油は、油膜や臭いがあり一般の方々でも分かりやすいものですので、土地の売買の後に、解体して土を搬出しようとしたが油の臭いがする、基礎を作るのに掘削していたら油膜がついた土が出てきたなど、買い主とのトラブルになるケースや、近隣の方からの苦情といったトラブルになるケースがあります。
銭湯の燃料に、薪を使用している場合
次に薪を使用していた場合ですが、無垢材ではなく建築廃材などを使用していた場合に、建築材の防腐剤や塗料等に重金属を使用しているケースなどがあり、それを燃やすことになりますので重金属類(ヒ素、カドミウム、クロム、鉛、水銀、フッ素等)の土壌汚染の可能性が出てきます。重金属類の調査方法は、通常の表層土壌調査と同じです。
また、薪が不完全燃焼となっている場合には、ダイオキシンが発生しますので、ダイオキシン類の調査を行なうこともあります。ダイオキシンは焼却炉などの調査と同じように、炉の周辺や焼却灰を廃棄していた場所などで調査を行うこととなります。そして土壌汚染調査とは違い、表層から5cmの土壌を採取して、ダイオキシンの濃度が基準を満たしているかを調査します。
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