病院で使われている物質って、なかなかイメージしにくいんですが、義務調査になったり、売買の時に土壌汚染調査を求められることが多いって聞きました。。なぜなんですか?
病院でイメージしやすいのは、水銀の体温計かもしれませんが、古い病院ですとレントゲンの現像などが行われていたときに、ふっ素やほう素が使われていたこともありました。
病院を売却する際や、大きな病院ではの建て替えの際などに、土壌汚染調査を求められるケースが増えています。病院の調査物質について詳しくみていきたいと思います。
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病院で使用されている(されていた)物質
過去を含め、病院で使用されている可能性のある主な物質は次のとおりです。
物質名 | 溶出量基準 | 第二溶出基準 | 含有量基準 | 地下水基準 | 第二地下水基準 |
カドミウム及びその化合物 | 0.003mg/L 以下 | 0.09mg/L 以下 | 45mg/kg 以下 | 0.003mg/L 以下 | 0.03mg/L 以下 |
ほう素及びその化合物 | 1mg/L 以下 | 30mg/L 以下 | 4000mg/kg 以下 | 1mg/L 以下 | 10mg/L 以下 |
ふっ素及びその化合物 | 0.8mg/L 以下 | 24mg/L 以下 | 4000mg/kg 以下 | 0.8mg/L 以下 | 8mg/L 以下 |
鉛及びその化合物 | 0.01mg/L 以下 | 0.3mg/L 以下 | 150mg/kg 以下 | 0.01mg/L 以下 | 0.1mg/L 以下 |
六価クロム化合物 | 0.05mg/L 以下 | 1.5mg/L 以下 | 250mg/kg 以下 | 0.05mg/L 以下 | 0.5mg/L 以下 |
セレン及びその化合物 | 0.01mg/L 以下 | 0.3mg/L 以下 | 150mg/kg 以下 | 0.01mg/L 以下 | 0.1mg/L 以下 |
水銀及びアルキル水銀 その他の水銀化合物 |
0.0005mg/L 以下かつアルキル水銀が検出されないこと | 0.0005mg/L 以下かつアルキル水銀が検出されないこと | 15mg/kg 以下 | 0.0005mg/L 以下かつアルキル水銀が検出されないこと | 0.005mg/L 以下かつアルキル水銀が検出されないこと |
砒素及びその化合物 | 0.01mg/L 以下 | 0.3mg/L 以下 | 150mg/kg 以下 | 0.01mg/L 以下 | 0.1mg/L 以下 |
注意1:他の特定有害物質の取扱いについても確認する必要があります。 カドミウムの基準が強化されています。
注意2: 特定有害物質が含まれているかどうかは安全データシート(SDS)等で確認が必要です。
注意3: 病院のような薬品を多く扱うような場所では、様々な有害物質が検出される可能性があります。
長年にわたり薬品や廃棄物を放置すると土壌に侵食するおそれがあります。病院以外にも、廃液を地面に撒いていた、埋めていたなんていう話は、案外よく耳にします。
病院での特定有害物質の用途
◆ 水銀
かつて病院で使われていた体温計、血圧計には、水銀が使われていました。今でも電子式の体温計よりも正確に測れるということで販売されているところもあります。
しかし、体温計自体がガラス製のため、割れてしまうと水銀が出てきます。割れてしまっては体温計は使えないので、そのまま地中へ埋めてしまうことが多かったそうです。その後の工事や調査の際に、埋めてしまった水銀が出土してしまい、土壌汚染となることがあります。
◆ ふっ素やほう素
レントゲンの写真を現像する際には、現像液にふっ素やほう素が含まれているものがあります(現役で使用されているかは不明ですが)。現像液も処分業者に委託せず不適切な処分を行うことによって、土壌汚染を引き起こすケースがあります。
◆ ジクロロメタン
麻酔剤として使用されています。
◆ 六価クロム
菌の染色、培養などに使用されていることもありました。
◆ カドミウム
臨床検査で使用されたりします。
◆ シアン
血液検査に使用されたりします。
◆ その他の土壌汚染
水銀やふっ素、ほう素以外にも病院を建てたときの盛土に含まれていた鉛などが検出されることがあります。病院が操業しているときには、アスファルトやコンクリートで被覆があるので、健康被害は考えにくいですが、解体中や増設に伴う工事の際には注意が必要です。
その他に、病院では、過去に遡ればケガに塗る皮膚・キズの殺菌・消毒に用いられる赤チン(マーキュロクロム液とも呼ばれる水銀化合物)の使用が否定できません。眼科があれば洗顔薬としてホウ酸(ホウ素化合物)が問題となります。また、歯科なら詰め物のアマルガム(水銀の合金)が問題となります。さらに検査をやっていれば、血液等の検査薬にフッ素化合物が使われている場合があります。また、フッ素化合物は、レントゲンの現像液に入っている可能性があります。
義務調査が必要になるケース
病院では、思ったより、色々な物質が使われているんですね。
次は、どんな時に義務調査になるかを見ていきます。
東京都では以下の場合が義務調査が必要です。
東京都では、「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(以下、環境確保条例)」で、以下の条件を満たしている病院に土壌汚染の有無を調査し、その結果を区や都に報告することを義務づけています。
環境確保条例について詳しい内容は↓をご覧下さい。
東京都条例に該当する以下の要件の指定作業場を設置している病院等
- 病床数が300床以上の病院
- ボイラー
- ガス機関(GHP等)
- 自動車駐車場(駐車台数が20台以上のもの)
- 焼却炉
調査の実施契機
- 病院等を廃止または建替えるとき
- 指定作業場の要件に該当しなくなったとき
東京都以外のケース
代表的な東京都の条例を紹介しましたが、東京都以外でも条例が定められている場合がありますので確認が必要です。
各都道府県の条例について詳しくはこちら↓
また、条例の無い場合でも、土壌汚染対策法で、有害物質使用の特定施設がある場合は病院を廃止する際に行政への土壌汚染調査結果の報告義務があります。
3000 ㎡以上の病院の建て替えも義務調査に注意!
条例等が無くても、大きな病院の場合、有害物質使用の特定施設が無くても 3000㎡以上の土地で立て替えや解体などの土地の改変を行う場合には義務調査になりますが、この時、地歴調査(書類だけの調査)だけ終わらず、有害物質を使用しているので土壌を採取しての調査になるケースが多いので注意が必要です。
病院の場合、義務調査になることもあり、その場合その期間も踏まえて工事計画等を立てる必要がでてきますので、ご不明点など、お気軽に聞いて頂ければと思います。
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