自動車整備工場でしてる作業って、自動車の「点検」「整備」「板金塗装」とかが思いつくんですけど、売買の時に土壌汚染調査を求められることが多いって聞きました。。なぜなんです?
自動車整備工場は、分解をして「点検」「整備」を行いますが、ブレーキオイルやエンジンオイルの製品の成分(ふっ素)、燃料タンクの分解(鉛、ベンゼン、油)などに土壌汚染物質(特定有害物質)が含まれているのが原因です。
「板金塗装」でも、剥離剤や塗料に土壌汚染物質(特定有害物質)が含まれる可能性があるので、そのためです。
自動車整備工場を売却する際に、土壌汚染調査を求められるケースが増えています。自動車整備工場の調査物質について詳しくみていきたいと思います。
自動車工場の土壌汚染調査について調査の流れや内容を詳しくまとめた無料冊子ができました
自動車整備工場で行われる作業
自動車整備工場で、主に行われる作業は、以下の3つになるかと思います。
- 点検整備
・・・車検や日常点検、定期点検(12ヶ月点検など) - 分解整備
・・・故障した際や点検整備を行う際、不良個所が発見された際に、様々なパーツを自動車から取り外し、ばらして修理や点検、改造を行います - 板金・塗装
・・・車体のキズやへこみの修理、その後の塗装
主な「点検整備」作業
・ハンドルの操作具合(アーム類の緩み、がた、損傷)の点検
・ブレーキのきき具合の点検
・ブレーキディスク、ブレーキドラムなどの摩耗、損傷、劣化の点検
・ホイール、ベアリングなどのガタやズレの点検
・サスペンションの緩み、ガタ、損傷の点検
・ドライブシャフトの緩みの点検
・点火プラグの状態の点検
・ファンベルトなどの緩み、損傷の点検
・各種オイルやフィルタなどの汚れ、劣化の点検
主な「分解整備」作業
・エンジン(原動機)を外して行う整備または改造
・ドライブシャフト、プロペラシャフト等(動力伝達装置)を外して行う整備または改造
・ロアアーム、ベアリング等(走行装置)を外して行う整備または改造
・タイロッドエンド等(操縦装置)を外して行う整備または改造
・ディスクキャリパ、ブレーキドラム等(制動装置)を外して行う整備または改造
・シャシのばね等(緩衝装置)を外して行う整備または改造
主な「板金」作業例
・自動車体などの鋼板(パネル)を叩いたり、引っ張ったり、交換します。
状況に応じて行う作業。板金加工の種類は大きく3つに分けられます。
・外板鈑金(車体の外側についているパネルを修理すること)
・フレーム修正、内板骨格修正(車体の骨格にあたる部分を修理すること)
・取り換え(変形の激しい箇所のパネルを取り替えること)
「塗装」作業
・板金加工作業終了後に車体に塗装することが主な業務です。
業務の内容(工程)は大きく分けると、以下のようになります。
下地工程(表面を平らにするなど、塗装するための下準備作業)
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塗装工程(車体と同じ色を調色し、車体に塗る作業)
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磨き工程(付着した塗料の凹凸や、ごみを除去する作業)
ほんと、一口に、自動車整備といっても、いろんな工程があるんですね。
それぞれの工程で考えられる土壌汚染物質ってどんなものなんでしょう??
整備点検・分解点検で考えられる土壌汚染
①ブレーキ、エンジン等に含まれるふっ素樹脂加工オイル
ブレーキ、エンジン等に含まれるフッ素樹脂加工を施されたオイルに汚染のおそれがあります。
フッ素樹脂加工(テフロン加工)
・・・耐熱性、耐薬品性、耐水性、耐摩擦性、酸化安定性など様々な特性を持ち、エンジンの磨耗などを防ぐ効果があります。
*現在、流通しているものではモリブデン、チタン、セラミック等が含まれるオイルが一般的ですが、フッ素樹脂加工がされたものが含まれている製品もあるので注意が必要です。
②ガソリン(鉛・ベンゼン・油)
燃料タンクに含まれるガソリン(鉛・ベンゼン・油)が対象となります。
*ベンゼンと鉛:ガソリン(レギュラー、ハイオク)車のみベンゼン、鉛が含まれているので対象となります。
*油:ガソリン(レギュラー、ハイオク)、ディーゼル(軽油)に含まれる油が対象になります。
・・・現在では1%以下のものが市販されています。
・・・1975年以前のガソリンには、ノッキング(車体の金属音・振動現象)を防ぐためにアルキル鉛が添加されていました。(有鉛ガソリン)1980年以降は完全に無鉛化されています。
③バッテリーに含まれる鉛
車両用のバッテリーは鉛蓄電池が一般的です。
鉛は材料が豊富であり、安価でかつ、外部環境(外気温など)が異なっても使用できるというメリットがあるので使用されています。
板金で考えられる土壌汚染
①剥離剤
フレームやドアの修理など板金を行う前の下準備として、車の塗装をはがす作業が行われます。
剥離剤に使用される可能性のある土壌汚染物質
テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ジクロロメタンが剥離剤として使用されている可能性があります。1950年頃にはベンゼンも剥離剤として使用されていた可能性があります。
②自動車製品(部品)に含まれる重金属類
一般社団法人 日本自動車工業会(自工会)により、以下の物質について、自主規制が行われてきました。
以下の物質について、それ以前については部品等で使用されてきたことになります。
塗装で考えられる土壌汚染
塗装工程で考えられる土壌汚染は、塗料に含まれる土壌汚染物質が原因になります。
塗料に含まれる重金属類についても、少しずつですが規制が進められています。
塗料に含まれる重金属類の規制について
水銀含有塗料について
日本塗料工業会の調査によると、昭和48年頃までは水銀が含まれている塗料が船舶や防腐剤、着色顔料だけではなく、耐熱性塗料として含有していました。昭和50年以降は水銀を含む塗料は製造されていません。
*ただし、製造が終了しても在庫等で使用されていた可能性はあります。
鉛含有塗料について
2020年現在でも鉛を含む塗料は一部使用されていますが、2021年以降は鉛含有塗料は製造禁止となります。鉛も水銀同様で、製造が終了しても在庫等で使用されている可能性があります。
水銀、カドミウム、セレン、砒素の規制
2001年の時点で水銀、カドミウム、セレン、砒素については使用禁止物質に指定されており、含有量が0.1%以上のものは使用禁止となっている。
鉛、クロムの規制
2003年の時点で鉛を1.0%以上含む原材料の製品は代替品への転換。クロムを1.0%以上含む原材料の製品は全廃となりました。
まとめると、以下のようになります。
自動車工場の土壌汚染調査について調査の流れや内容を詳しくまとめた無料冊子ができました
自動車整備といっても、工程が様々なので、そこで可能性のある土壌汚染物質も色々で。汗。。どうぞ、ご質問はお気軽に。