1.剥離剤とは?
剥離剤とは、金属や塗装面などに付着した塗料、油脂、錆、接着剤などを化学的に分解・除去するための薬剤です。自動車整備工場では、車体の再塗装や部品の洗浄作業などで頻繁に使用されます。
主な用途
古い塗膜の除去
グリースやオイルの洗浄
接着剤の除去
表面処理前の準備作業
剥離剤のメリット
1) 労力の削減
人の手で塗装や塗膜を剥がそうとすると、大変な労力がかかるので、剥離剤を用いることでその労力を削減することが可能です。
2) 素材への負担軽減
物理的に塗装や塗膜を剥がす場合、スクレーパーなどで素材を傷つけてしまう恐れがあります。剥離剤は素材を傷めずにピンポイントで塗装・塗膜に作用しますので、素材を傷つける心配はありません。
2.剥離剤 の種類
有機溶剤系
溶剤系(ノンクロル)
長所
油脂溶解力に優れる
非鉄系軽金属にも使用できる
環境安全性に優れる(塩化メチレンと比較して)
短所
臭気、刺激性がある
粘度が高めのため、細部の洗浄性が悪い
乾燥性が悪い(塩化メチレン系と比較して)
注意事項
水質汚濁防止法に該当
消防法に該当(引火点あり)
塩化メチレン系 (クロル)
長所
油脂溶解力に優れ、浸透性・乾燥性が良い
非鉄系軽金属にも使用できる
不燃性であり、消防法の規制から外れる
短所
低沸点(40℃)で気化しやすい
臭気、刺激性がある
注意事項
労働安全衛生法(特化則)、労働基準法、PRTR法に該当
ジクロロメタン(別名:塩化メチレン・メチレンクロライド)を含む剥離剤は、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法、特別管理産業廃棄物に該当します。
水系剥離剤
水系/水溶性
長所
安全性が高く、消防法の規制から外れる(一部危険物あり)
比較的安価で任意に水希釈が可能、洗浄機での使用もできる(対応品のみ)
環境安全性に優れる
短所
錆が発生しやすい(水によるリンス後)
乾燥性が悪い(塩化メチレン系と比較して)
酸やアルカリによる被洗浄物へのダメージ懸念(ただし、液の選定によって対応可能)
発泡しやすい(低泡タイプあり)
注意事項
鉄材等に使用の場合、リンス後の防錆処理が必要 (防錆効果を持つ製品 もあり)
原液およびリンス水がpH:2.0以下またはpH:12.5以上の場合は特別管理 産業廃棄物に該当
水/溶剤系
長所
剥離洗浄性に優れ、水によるリンスが可能
消防法の規制から外れる(引火点なし)
環境安全性に優れる
短所
乾燥性が悪い(塩化メチレン系と比較して)
酸やアルカリによる被洗浄物へのダメージ懸念 (但し、液の選定によっ て対応可能)
原液加温使用が前提、使用劣化により液分離が発生 (水分および原液の補給管理が必要)
注意事項
鉄材等に使用の場合、リンス後の防錆処理が必要
原液およびリンス水がpH:2.0以下またはpH:12.5以上の場合は特別管理 産業廃棄物に該当
水質汚濁防止法に該当
3.まとめ
剥離剤の使用は、工業化の進展とともに広まりました。特に自動車産業では、1950年代以降の大量生産体制の中で、再塗装やメンテナンスの効率化を目的に使用が増加し、ベンゼン、アセトン、エタノールなどの有機溶剤の混合液や熱高濃度苛性ソーダ水溶液などが使われていました。
その後、皮膚刺激や呼吸器刺激など人体への影響を理由に、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタンなど不燃性の塩素系溶剤や、メチルエチルケトン、トルエン、メタノール、酢酸エチルなど引火性液体が使われるようになりました。
初期の剥離剤は強力な有機溶剤を主成分としており、効果は高いものの、人体や環境への影響が懸念されるようになりました。
現在では、より環境に配慮した水系剥離剤やバイオ系剥離剤も登場しています。
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