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2022年

特定有害物質の「鉛」ってよく聞く物質ですが、意外と怖い物質です。


今回は、数多ある特定有害物質から、土壌汚染調査で基準値を上回ることが多い「鉛」について紹介したいと思います。

一般的に鉛は自然界にも多量に存在します。例えば石の中にも基準値を超過する鉛が含有されています。他にも家や工場を建てる際に、盛土を行っており、その中に基準値を超過してしまっている土壌が含まれている場合があります。

現在、日本で鉛は生産・輸入で年間25万tほどが供給され、そのほとんど(およそ9割)が蓄電池(バッテリー)の電極に使われています

鉛は利便性が高く、古くから様々な用途で用いられました。例えば、過去において鉛は白色の顔料としても古代ギリシャ時代から近代の油絵まで利用されてきました

鉛白(フレークホワイトまたはシルバーホワイト)と呼ばれ、暖かな白色とその密度、完全ともいえる不透明度、長期間の持続性etcという性質を持ち、画家たちにはとても魅力的な絵の具であったため、作品にも多く用いられました。それ故に画家の中には鉛中毒(画家疝痛と呼ばれた)になる人も多かったようです。『着衣のマハ』等で有名なゴヤは、鉛中毒による神経症で苦しんだ一人といわれています。

また、この鉛白という顔料は、その白の発色性の高さから美白化粧品として用いられていた時代もあります。より白い肌が美しさのバロメーターとなっていた時代では高い需要がありました。勿論、人体に有毒な鉛を直接肌に塗りつけることであり、使用し続けた多くの人々が鉛中毒によって苦しい思いをしたはずです。背筋がゾッとしますね。

日本では白粉に鉛が含まれていたことがあり(1934年に鉛を使用した白粉の製造禁止)、かつてはこれにより多くの人々が中毒症状により苦しんだと思われます。特に白粉を常用する役者の多くには鉛中毒が見られました。

ほかにも、酸っぱくなったワインを甘くするために醸造過程で甘味料として鉛の化合物が使われることがありました。音楽家ベートーベンは、ワインが大好物で鉛も一緒に摂取し続けていたため鉛中毒で亡くなったという説があります。その証拠として彼の遺髪からは大量の鉛が検出されたとのことです。

日本の昔の水道配管は鉛で出来ており、それが原因で鉛中毒になった人もいました。

過去「ハンダ」には鉛が使われていましたが、現在では鉛フリーと記載されているものが多く販売されているように、徐々に使用が控えられるようになってきています。

また、自動車のガソリンには鉛化合物をガソリンに混ぜた有鉛ガソリンが広く出回っていました。1980年代後半までには、無鉛ガソリンに置き換わり、現在では自動車用有鉛ガソリンの販売・使用は禁止されています。

このように過去から現在まで人の生活と密接にかかわっている鉛にはどのような毒性があるのでしょうか。

鉛中毒の毒性は酸素の働きを阻害することにあります。
急性毒性としては胃腸障害、腎臓障害および神経障害(頭痛、興奮状態、不眠、筋肉の痙攣など)で重度になれば脳疾患が悪化して死亡します慢性一般毒性としては上記の神経障害に加え、疲労感、うつ状態、集中力低下、記憶力低下の中枢神経障害、手足の脱力感などの抹消神経障害が見られます子供では学習能力の低下、聴覚障害、行動異常なども引き起こします。

「鉛」という名前は聞きなれている方が多いためこのような毒性が羅列されるのは意外だった方も多いかもしれません。しかし、実際には鉛の毒性はかなり強いものとなっています。

現在でも鉛は様々な場所で使われています。身近にあるものほど大丈夫だろうと思いがちですが、有害物質という認識を持って取り扱いをしてください。

例えば、前述にある有鉛ガソリンは現在は取り扱いがされていませんが、かつてガソリンスタンドがあった土地には地下タンクから漏出し、汚染された状態のまま放置されている可能性もゼロではないのです。そうとは知らず、その土地を購入し、住居を建てて住んでいたら大変なことになるやもしれません。

意外な場所だと、射撃場は鉛による土壌汚染が懸念されます。
過去に伊万里市の射撃場で鉛による汚染が検出されたケースもあります。
薬品や有害物質なんて使っていないのに「なぜ?」と疑問に思うかもしれません。実は射撃場で使われている弾丸には様々なメーカーの製品があるようですが、そのほとんどに使われているのが、です。

射撃場で鉛汚染が問題になるのは、弾丸が土壌中に存在し続けていると、土壌中の鉛含有量が高くなってしまうことと、雨水などで鉛の成分が溶け出てしまい、地下水に乗って汚染が広がってしまうことにあります。

含有量が高くなっていたとしても、射撃場で生活をするわけではないため、健康被害になり得ることは少ないと考えられますが、問題は鉛が溶け出てしまっている水です。地下水を飲用として生活されている場合には、鉛で汚染されてしまっている水を飲んでしまっているということになります。まず射撃場での鉛汚染を調査する際には、敷地から外に流れ出る水の中に鉛の汚染がないかを調査します。汚染がなければ、そこで調査は終了となり、汚染がある場合には、近隣の井戸から鉛汚染が出ないかを調査します。

環境省では射撃場に係る鉛汚染調査・対策ガイドラインが出されています。このガイドラインの記載には射撃場の設置時の公共用水域への配慮や周辺での地下水飲用有無等を考慮した上での運営のことが書かれております。話が変わりますが滋賀県では琵琶湖の水に対する汚染を警戒してか、工場を設置した際には井戸を設置する条例が存在します。

また、東京都、特に日本橋や弊社の東京営業所のある東陽町などがあるエリアでは、土壌汚染調査を行うと、鉛の汚染が見つかりやすい傾向があります。一般の住宅などからも汚染が見つかります。工場や整備場などとして土地の利用履歴がないはずであるのにも関わらずです。実はこれらの地域は第二次世界大戦時に東京大空襲で一面焼け野原になった地域なのです。時代としては昭和20年なので約70年前ですね。

なぜ過去のこの空襲が、鉛による土壌汚染が生じる原因となるのでしょうか。東京大空襲では東京都内に30万強の焼夷弾がばらまかれたそうです。その焼夷弾にはガソリンが使われており、その添加剤として「鉛」が含まれていました。故に広範囲に落とされた焼夷弾が鉛という汚染物質をばら撒く結果となってしまい、その爪痕が土壌汚染問題となって発見されているというわけです。ベトナム戦争時の枯れ葉材といい、戦災は自然環境に対しても大きなダメージを与えるのです。

鉛汚染の実害としては、アメリカのニューヨークでの鉛汚染があげられます。土壌ではなく塗料に含まれている鉛によって、神経障害が引き起こされ、幼児に至っては発育障害や言語障害がみられることもあるそうです。(特別リポート:NYに潜む危ない鉛汚染、子供5400人が中毒に

鉛による土壌汚染は広範囲に及び健康被害を引き起こしてしまう可能性は大いにあります。そして、どれ程の年月が過ぎたとしても土壌汚染というものはそう簡単に無くなることはありません。土壌汚染があるということは日々、健康被害を引き起こしてしまう可能性があります。このように土壌汚染とは非常に身近にある問題です。テレビの中の話や遠い地域の話ではありません。もちろん土壌汚染があるからといって確実に悪影響が出てしまうということでもありませんが、長期間にわたり汚染物質を摂取し続けてしまうと身体に悪影響が出てしまうことは間違いありません。

これから住宅を買われる方、土地の売買をお考えの方は、土壌汚染調査をすることをお勧めいたします。土壌汚染調査のことならジオリゾームまでお問合せください。

佐伯

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